★★★☆☆

【ネタバレなし】「イヴの時間 劇場版」の感想。ライトな味わいの”ブレードランナー”

今回取り上げる映画は「イヴの時間 劇場版」
ロボットが日常に溶け込んだ世界で、人間とアンドロイドとの交流を描く作品です。

「イヴの時間 劇場版」のあらすじ・キャスト

【あらすじ】
近未来、人間とまったく見分けのつかないロボット「アンドロイド」が実用化されて間もない社会。
高校生のリクオは、アンドロイドをただの便利な家電としてしか扱わない多くの人々と違い、リクオの家にいるハウスロイド・サミィには同じ人間のように接していた。

ある日リクオは、サミィの行動記録の中に「Are you enjoying the time of EVE?」という不可思議な文字列を見つける。
GPS信号を追っていくと、どうやらサミィは外出中、勝手に寄り道をしていることがわかった。
同級生のマサキとともに、問題の場所に足を踏み入れていくリクオ。

そこは、「人間とロボットを区別しない」というルールがある不思議な喫茶店「イヴの時間」だった……

【キャスト・基本情報】
声の出演: 福山潤、野島健児、田中理恵、佐藤利奈
監督: 吉浦康裕
上映時間: 106分

ネタバレなし感想。SFにしてはツッコミどころが多すぎる

SF作品を楽しむときに僕が気にしているのは「ツッコミどころがないか」です。
現代とは異なる科学技術が存在する世界で、人々はどんな価値観を持っているのか?
行政システムはどのような影響を受けているのか?
細かいところではありますが、そうした設定がきちんと作り込まれていないと、SFは面白くならないと思うんです。

その意味では、「イヴの時間」にはツッコミどころが多すぎます。

そもそも、人間とまったく見分けのつかないアンドロイドたちの存在意義がわからないのです。
アンドロイドは、頭上に光るリングが表示されている以外、人間と見た目は変わりません。
ところが肝心の機能はというと、ちょっと高級なスマートスピーカー程度に留まっています。

家族のスケジュールを教えてくれたり、料理を作ってくれたりできるものの、「家族・スケジュール」「朝食・ひとりぶん・いますぐ」のように、いかにも機械にわかるような言葉でないと命令できないんですよね。
受け答えも実に機械的で、常に無表情だし、人間さながらの自然な会話ができる雰囲気はありません。
こんな家電、家にいて楽しいか?

かと思いきや、「イヴの時間」の中にいるアンドロイドたちは、まるで人間かのように振る舞っています。
快活に話し、笑ったり泣いたり、愛を語り合ったり。
いやいやいや、その機能はどこから出てきたんですか?
実装だけはされているけど、使ってないってこと?
それ、めちゃくちゃ無駄じゃないか??

ともかく、彼らアンドロイドはいったい何のために作られたのかが最初から最後まで謎なのですよ。
さすがにSFとしてどうなのかな〜と思います。

それぞれのエピソードは魅力的。ギャグ演出もいい!

肝心の「アンドロイド」の設定がどうにも納得いかない「イヴの時間」ですが……
そこにさえ目をつぶれば、お話は割と面白いです。

「イヴの時間」はもともと全6話の”ファーストシーズン”として配信されており、それを映画として編集し直したのが「劇場版」。
映画全体で大きなストーリーが動いているのではなく、個々のサブキャラクターに焦点を当てたお話の集合体のような構成になっています。
この、それぞれのエピソードがなかなかに魅力的なんですよ。

  • アンドロイドと人間の奇妙なカップル。
  • 店に迷い込んできた、旧式のロボット。
  • 幼い少女と、彼女に愛情をそそぐ祖父。
  • やたらとロボットを毛嫌いするマサキ。

「人間はどこまでロボットを受け入れられるのか」
「ロボットはどこまで人間を理解できるのか」
こうした問いに、さまざまな面から光を当ててくれています。

また「イヴの時間」はギャグ演出もいいですね!
笑いどころにあえてシリアスなBGMを組み合わせる手法はかなり気に入りました。
一番好きなのは、リクオが巨乳アンドロイドの胸を凝視してしまうシーンです笑

「イヴの時間」は、ライトな「ブレードランナー」

ちょっとでもSFに詳しい人ならば、「イヴの時間」の設定からある有名な作品を思い浮かべるでしょう。

  • 人間とまったく見分けのつかないアンドロイド
  • アンドロイドを駆逐しようとする「秘密委員会」
  • アンドロイドであることを隠している「イヴの時間」の客たち

そう!「ブレードランナー」ですね。

設定は非常によく似ていますが、「イヴの時間」は喫茶店に集うアンドロイドたちを主人公にした群像劇とすることで、かなりライトな味わいになっています。
アンドロイドたちの駆除をたくらんでいる「倫理委員会」なる組織の存在も明らかになっていますが、少なくとも今作ではあまり物騒な動きはなかったですね。

殺伐とした展開になりがちな”アンドロイドもの”SFの中でも、不思議と安心して観ていられる作品でした。