★★☆☆☆

【ネタバレなし】「未来のミライ」のあらすじ・感想。ビジュアルは美しいがストーリーは退屈

今回取り上げる映画は「未来のミライ」

細田守監督のオリジナル長編アニメ第5作です。
4歳の少年・くんちゃんと、未来からやってきた彼の妹・未来ちゃんとの不思議な冒険を描きます。

こんな人におすすめ
  • 細田守のアニメなら全部観たい!という人
  • 電車が走ってる風景にワクワクする人
  • 子育てに苦労した経験のある人

「未来のミライ」のあらすじ・キャスト

【あらすじ】
出産のためしばらく入院していたお母さんが、久しぶりに病院から戻ってきた!
主人公のくんちゃんは妹の未来ちゃんに興味津々。
しかし、お父さんもお母さんも未来ちゃんのお世話にかかりっきりになっていることに気づき、だんだん赤ちゃん返りを起こしていく。
思わず未来ちゃんの頭を新幹線のおもちゃで殴ってしまうくんちゃん。
当然お母さんにこっぴどく叱られ、泣きながら中庭に飛び出していく。
するとそこに謎の人物が現れて……

【キャスト・基本情報】
監督・脚本: 細田守
出演: 上白石萌歌、黒木華、星野源、麻生久美子、吉原光夫、宮崎美子、役所広司、福山雅治
上映時間: 98分

ネタバレなし感想。きれいなビジュアルと退屈なストーリー

「未来のミライ」、細田監督の前作「バケモノの子」と比べると、独自のセンスが光る美しいシーンが多く、画的には非常に楽しめました!

予告編にも登場する、ギラギラした東京駅の場面なんか特によかったですね。
鮮やかなディスプレイと構内を走る数々の路線はとても派手で賑やかなのに、どこか不気味さを感じさせるバランスが最高!
神田松之丞さん演じる、謎の駅員ロボットとの会話にも背筋がぞわぞわしました。
この東京駅のシーンだけでもずっと見ていたいと感じましたよ。

ほかにも魚群の中を泳いでいくくんちゃんとか、家系図のツリーの中に飛び込んでいくシーンとか、これまでのアニメでは見たことのない表現がたくさんあって、その点は見ていて新鮮でした。

ところが!
「未来のミライ」、ストーリー的には極めて退屈です。

その原因は、物語の進み方がワンパターンである、そして謎解きらしい謎解きが一切なされないところにあります。
順番に説明していきますね。

話の進め方がワンパターンで退屈

「未来のミライ」は、
くんちゃんが庭に出る→どっかにワープ→謎の人物と遭遇
というループの繰り返しで話が進んでいきます。

ところがこのループがただの小さいエピソードの羅列でしかないので、観客の興味をあまり惹かないんです。
謎の人物が太田家の飼い犬であったり、未来の妹であったりする小さな驚きはあるけれども「で?」って感じ。

それぞれのエピソードも大した内容ではありません。
特に、未来ちゃんと雛飾りの話がぜんっぜん面白くない。
21世紀に生きる女子高生が「雛飾りを片付けないと婚期が遅れる」なんて迷信を真に受けて必死になるなんて、応援する気にもなれないよ。

謎が謎のまま放置され続けるので退屈

映画の中ではいかにも「謎!」「伏線!」というアイテムがいくつか示されるのですが、最後まで回収されることのないままです。

「くんちゃんが庭に出たとき、なぜワープしてしまうのか?」
「未来ちゃんはなぜタイムスリップしてきたのか?」
「未来ちゃんの手にあるアザはなんなのか?」

序盤で出てくるこれらの謎は、いっさい解き明かされることなく映画が終わってしまいます。
いくらなんでもヒドすぎるでしょ……

ちょっとした手がかりすら与えられないので「真剣に見るだけ損じゃね?」って気がどんどんしてきてしまうんです。

主人公の「くんちゃん」に魅力がない!

「未来のミライ」、主人公のくんちゃんが全然かわいくないんですよ……
アニメ映画としては致命的なんじゃないかと思うんですけどね。

この男の子、ひとことで言ってタダのわがままなガキなんです。
未来ちゃんが産まれたことによって赤ちゃん返りして「未来ちゃん好きくない!」と泣きわめくばかり。
しまいにゃ未来ちゃんの頭をおもちゃで殴りつけてしまう始末。
こんなの見せられたら、実の両親じゃなくてもノイローゼになっちゃうよ。

小学生の息子さんがいる友人に感想を聞いたところ「子供はみんなあぁいうもんだよ〜」とケロッとしていたので、子育てを経験した人とそうでない人とでは見方がわかれるかもしれません。
自分は子供がいないということもあり、くんちゃんの振る舞いはただただ不快にしか見えませんでした。

声を演じた上白石萌歌も、小さな男の子の声には全然聞こえなくて、明らかにミスキャスト。
元々は黒木華がくんちゃん、上白石萌歌が未来ちゃんを演じる予定だったのが、監督の一存で逆の配役になったそうです。
どうしてそんなことをしたのか理解に苦しむ……

細田監督、ひょっとしてビジュアル以外には興味がない?

前作「バケモノの子」を見て薄々感じてはいたんですけど、ひょっとして細田守監督は描きたいビジュアル以外に興味がないのかもしれません。

たとえば「バケモノの子」に関して言えば、映画全体はキャラクター設定も世界観も極めて雑でとても乗り切れない作品であった一方、渋谷のスクランブル交差点や代々木体育館前を巨大なクジラが動き回るというシーンは独特の美しさがあって、非常に印象的でした。
細かいお話は覚えていなくても、あのクジラは覚えているという人も多いと思います。

同じように「未来のミライ」も、近未来の東京駅のシーンはものすごく印象に残りました。
お話としてはイマイチだったけどあの場面が見られただけでもまぁいいか、と許せるほどの完成度でした。

ただどちらにも言えるのは、クジラも電車もクライマックスシーンの伏線以外の必然性があんまりないってことです。
「バケモノの子」のクジラはメルビルの『白鯨』にチラッと絡めてはいるけど、別に『白鯨』でなくても成り立つ話だし。
「未来のミライ」の電車に至っては、くんちゃんが好きな乗り物以上の意味はありません。

つまり、細田監督の頭の中には描きたいビジュアルがまずあって、そこから逆算して小道具を話のなかに散りばめるって作り方をしてるんだと思うんですよ。
そして残念なことに、小道具の散りばめ方があまり上手くない……
だからビジュアルしか印象に残らない映画になってしまうんじゃないかな〜。

細田監督が自分で脚本を書き続けるのであれば、全編お得意の現代トーキョー + ファンタジーな画で埋め尽くして、シナリオの雑さを画面の迫力で押し切ってほしい。
紀里谷和明監督の「CASSHERN」くらい振り切ってくれればまだ許せる!!

それが無理なら「時をかける少女」「サマーウォーズ」の頃のように、ちゃんと脚本書ける人とタッグ組んだほうがいいと思うよ。