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【ネタバレ】「ドラえもん のび太と竜の騎士」のあらすじ・感想。本格SFとして楽しめる作品!

今回取り上げる映画は
「ドラえもん のび太と竜の騎士」

劇場版ドラえもんの中でも、
特にSFとしての完成度が高い一作です。

「ドラえもん のび太と竜の騎士」のあらすじ・基本情報

0点の答案用紙を隠そうと、
のび太がひみつ道具“どこでもホール”を使ったところ、
偶然、広い地下空洞を発見する。

みんなで秘密基地にして遊んでいると、
スネ夫が行方不明になってしまう。

スネ夫を探しに地下空洞の奥へと出かけると、
そこは地底人の住む地底世界へと繋がっていた!

しかし、地底人たちの様子がどこかおかしい。
彼らの企みとはいったい…?

【基本情報】
声の出演:大山のぶ代、小原乃梨子 、 野村道子、たてかべ和也、肝付兼太、堀秀行、神代智恵子
監督:芝山努
上映時間:91分

恐竜×地底世界という、SF要素のかけ合わせが絶妙!

本作の主なテーマは、
「恐竜の生き残り」
「地底世界」の二つです。

「現在、地球上には恐竜の生き残りが存在するか?」との疑問に
「地球上に恐竜はいない」と、
ひみつ道具で早々に答えが出てしまいます。

それと同時に、
のび太の見つけた巨大地下空洞の話が並行して進みます。
地下空洞は地底世界と繋がっており、
そこに恐竜が住んでいます。

恐竜は「地上」には存在しないが、
「地下」では存在している
という展開になるわけです。

ネス湖のネッシーの存在の有無の議論から、
この物語は始まります。

現在、有名なあの写真がトリックであることは
周知の事実でありますが、
「もしかしたら恐竜がいるかもしれない」
「いないと断定はできない」
という思いをくすぐる導入です。

この恐竜生存説は、
「骨の1本でさえ発見されないのはおかしい」と、
否定派のスネ夫に論破されてしまいます。
しかし、地底で生きているのなら、
骨が出てこなくたっておかしくない!
と、すんなり納得できてしまうのです。

SF要素の掛け合わせが非常に巧みであるなぁと、
映画ドラえもんにはいつもうならせられます。

この物語がもし
「地底人は絶対にいる!」と言い張るのび太から始まり、
地底世界を見つけました、という展開では、
面白味を感じないかもしれません。

日常から非日常へのゆるやかな移行が好き!

物語の序盤は、
のび太の見つけた巨大地下空洞を
秘密基地にして楽しみます。

地底世界へ行く前に、
地下の秘密基地というクッションを挟んでいます。

日常から非日常へと急展開しない
このスピード感も、
「のび太と竜の騎士」が好きな大きな要因です。

特に「のび太と竜の騎士」では
珍しく大人が介入し、
秘密基地での遊びが中断されてしまいます。

のび太達の日常がしっかりとあり
片足が非日常に踏み込んでいる
という感覚がとても好きなのです。

妙にリアルな地底人描写が秀逸!

ほかの映画版ドラえもんでは、
海底人(のび太の海底鬼岩城)、
天上人(のび太と雲の王国)など
地上以外に暮らす人々が描かれていますが、
彼らはみな地上人と同じ人間の姿で登場します。

その点「のび太と竜の騎士」の地底人は、
恐竜から進化したヒトであるフォルム、
設定がしっかりと描かれています。
(進化の過程を丁寧に説明するシーンも出てきます)

見慣れぬ奇妙な顔立ちをしており、
異様さがダイレクトに伝わってきます。

この媚びないビジュアルが、僕は大好きです。

初めて地底人の顔を見て
「なんか変な感じ…」
と言うのび太に対して
「僕たちからみたら君たちの方こそ…いや、やめておこう」
と答える地底人。

この一言で、地底人にリアルさが増し、
映画を観ている側はグッと視野が広がります。

「このような進化をたどった地底人が、もしかしたらいるかもしれない。」
「不思議な気持ちで、地上人の顔や文化を観察するかもしれないな」

と思うのです。

全く別の文化を持つ他者への理解、
寛容を無意識に植えつけられるシーンです。

これまでの作品のように熱い友情を育てるわけではなく、
地底人とは絶妙な距離感を保ち続けますが、
感情移入をしやすくなります。

ただ、一夜明けると、
女性の地底人に対して
「かわいいなぁ…」と目を輝かせる
のび太達の順応性の高さには驚きました。

僕は、最後の最後まで
「かわいい」とは思えませんでした…。

実は同一線上の時間軸にあるタイムトラベルSF!

やはり「のび太と竜の騎士」の一番の面白さは、
ラストで全ての伏線が回収され、
地底世界の始まりがドラえもん達のおかげであったことが
明かされるところでしょう。

クライマックスでは、
地底人が地上を取り戻すため、
6400万年前へタイムスリップし、
恐竜絶滅を阻止しようとします。

前作「のび太の鉄人兵団」で
しずかとリルルが起こした歴史の捻じ曲げを、
地底人が起こそうと企てるわけです。

関連▶「ドラえもん のび太と鉄人兵団」のあらすじ・感想

しかし彗星衝突を避けることはできず、
歴史が改変されるわけでも、
別の世界線が発生するわけでもありません。
(この作品は、彗星衝突説を採用してます)

彗星衝突で発生した大津波から身を守るために、
ドラえもんが作った地下室。

津波から生き残った恐竜たちをそこへ避難させること、
それが地底世界の始まりだった
という流れがなんとも気持ちが良いのです。

恐竜が地底人へと進化した
「聖域」と呼ばれる土地(地下空洞)が、
その地下室であったこと。

地下になぜ光や植物が存在するのか、
全てがドラえもんのおかげであると明かされます。

今ある世界は過去に戻り起こした行動が原因だったという、
同一線上の時間軸で起こるSFであることが、
この作品の一番の面白さです。

地底人にも感情移入してしまう作品なので、
なんとか彼らにも幸せになってほしいと
願わずにはいられないのですが、
それが見事な形で完結するため見ていてホッとします。

「地底に追いやられた」のではなく
「地底だからこそ生きている」のだと、
地底人も納得し、
これからも地底で生活を営んでいくと
決めるラストには、
心底嬉しくなったのを覚えています。

悪のいないストーリー

「のび太と竜の騎士」では、いわゆる「悪者」は存在しません。
悪者を倒すという分かりやすい構成ではなく、
本当の意味での平和的なエンディングを迎えた、
それまでにない作品です。

それでも、決して緩いストーリーではありません。

地底人がのび太達に対して親しくなりすぎない、
絶妙な距離を保ち続けることが、
この作品の緊張感を高めています。

それぞれの世界があり、
それぞれの主張がある。
と視野を広げ、
考えさせてくれる作品でもあります。

「のび太と竜の騎士」おもしろポイントまとめ

  • 恐竜の生き残りがいるかもしれないというSF要素
  • 作りこまれた地底世界の設定
  • すべての伏線が鮮やかに回収するラスト

「のび太と竜の騎士」では、
これらの様々な要素がうまくかけ合わさり、
地底世界の発見、冒険、戦い、
そして地底世界の誕生までの物語を構成しています。

面白さが90分の中に
ギュっと凝縮されており、飽きません!

このほか、

  • スネ夫の活躍(スネ夫が活躍する映画は少ないとされていますが、本作がF先生原作で一番スネ夫が重要な作品です。)
  • 地底世界の地域による発展のムラ(ドラえもんたちと接触する異世界は、星全体の規模であっても統一された文明であることが多いです。地域ごとに発展の村があることによりリアルさが増し、想像力を掻き立てられます。)
  • これまで以上にコミカルな戦闘シーン(対戦相手が「悪」ではない地底人のため)

なども、この映画を面白くしている要素です。

SFとしての完成度が高く
大人が観ても楽しめる作品だと思いますので、ぜひ!