★★☆☆☆

【ネタバレなし】「バケモノの子」のあらすじ・感想。世界観もストーリーもあまりに雑

今回取り上げる映画は「バケモノの子」

いまや日本を代表するアニメ映画監督となった、細田守監督のオリジナル長編アニメ第4作です。
前作「おおかみこどもの雨と雪」に続き、細田監督が脚本も手がけています。

こんな人におすすめ
  • 細田守のアニメなら全部観たい!という人
  • 渋谷の風景に馴染みがある人

「バケモノの子」のあらすじ・キャスト

【あらすじ】
9歳の少年・は、両親が離婚し母親と一緒に暮らしていた。
ところが母親が交通事故で急死してしまい、親戚の家に養子として取られそうになる。
蓮はそれを拒否して家を飛び出し、渋谷の街をさまよい歩く。

行くあてもなく道端にうずくまっていると、熊の顔をした異形の怪物・熊徹に声をかけられる。
その姿を追いかけるうち、蓮はバケモノたちの世界「渋天街」に迷い込んでしまう。
熊徹と再会した蓮は「九太」という名前を与えられ、熊徹の弟子となるが……

【キャスト】
宮崎あおい、染谷将太、広瀬すず、役所広司、山路和弘、麻生久美子、黒木華、リリー・フランキー、大泉洋、津川雅彦

ネタバレなし感想。九太が目指すゴールがわかりにくい!

「バケモノの子」、ストーリーに没入するのがすごく難しい映画でした。

こういう冒険モノの映画は、主人公が目指すべきわかりやすいゴールがあるのが普通なんですよね。
悪いやつを倒すとか、元の世界に帰るとか。

ところが「バケモノの子」は、九太がいったい何を目指して行動しているのかがわかりにくいんです。

最初の方は、ひとりでも生きていける強さを求めて修行するという目的が与えられてはいます。
すると途中でウサギの宗師さまから「各地の宗師を訪ねる旅に出よ」と指示が出される。
あ、なるほどそういう旅物語になるのか……と思ったのもつかの間、旅は1分くらいで終わってもとの生活に逆戻り。
なんだったんだあれは!
各地の宗志さまの教えも大して役に立ってるように見えないし……

さらに中盤では、成長した九太が渋谷に戻って受験勉強に励むという話になっちゃうし、もうよくわからんのですよ。

バケモノの世界がどういう位置づけなのかよくわからない

「バケモノの子」の軸となっているのが、人間界のすぐそばに「バケモノ」と呼ばれる者たちの世界があるという設定です。
ところが、バケモノがいったいどんな存在なのかがさっぱりわからない。

偉くなると神様に転生できるらしいので、少なくとも人間よりは神様に近い存在なのだろうと思うけど、みんな人間みたいな暮らしをしてるんですよ。
商店街があってスタジアムがあって、若い女性はチューブトップの服を着てハンドバッグ片手にお出かけしていたり。

人間を超越してる感じが全然しないんですよね。
むしろバケモノのほうが人間の真似をして暮らしてるようにしか見えません。

だいたい「バケモノ」という自称からして、人間目線の呼び名でしょ?
こういう設定ひとつひとつが甘いんだよな。

キャラクターの掘り下げが浅すぎる

熊徹といつもつるんでいる、サル顔の多々良とブタ顔の百秋坊というキャラクターがいます。
でもこの2人、普段は何をやってる奴らなのか?どうして熊徹と一緒にいるのか?が全然わかりません。

いちおう百秋坊は僧侶という設定がありますが、九太に家事を教えたりお茶をいれたりしているばかりで、僧侶っぽいことをやってる場面は皆無。
多々良にいたっては職業すらまったく明らかにされていません。
もしかしてただの無職なのか?

熊徹と九太が諸国漫遊の旅に出るときも、この2人はなぜか一緒についてくるし。
君たちが来る必要ないでしょ!

渋谷に戻った九太が出会う少女・楓の描きかたも大変に不満です。
特待生になれるほどの成績を目指して勉強してる受験生が、他人に勉強教えてるヒマなんてないはず。
それができるのはよっぽどの天才だけじゃん?

最後に、あの白くてもこもこした小さな生き物。
お前結局何者だったんだよ!
なんの説明もされないままだし、てきとうにかわいいキャラクターでも出しとけって感じで追加されたと捉えられても仕方ないぞ。

画に説得力のない場面が多い

「バケモノの子」には、画に説得力のない場面がちらほら見受けられます。

たとえば、熊徹が誰からも応援されていないことに気づいた九太が「負けるな!」と声を張り上げる場面。
野次馬たちが一斉に「熊徹を応援するやつがいるのか!?」とどよめき立つのですが……
いくらなんでも、何百人もの観客がわいわい盛り上がっている中で子供が大声出しても聞こえないっしょ?

同じようなシーンが、スタジアムでの決戦の場面でも出てくるんですよね。
主人公がセリフをしゃべったら誰でも耳を傾けるのかよ?

ほかに気になったのは、九太が渋谷に戻って不良に絡まれるシーン。
不良が九太の服装を「ダッサ!」と馬鹿にするんですけど、九太はパーカー風の上着に幅広のパンツを履いてて、むしろお洒落に見えるんですよ。
髪型だって、美容院に通ってワックスつけてもらってるのかってくらい決まってるし、全然ダサくないよ?

あとは終盤で重要になってくる、熊徹の「胸の中の剣」ってセリフですね。
いかにも取ってつけたように出てくるし、熊徹がなぜ「胸の中の剣」を大切にしているのか、まったく示されない。
何もかもがセリフ任せで、画でもストーリーでも説明がなされないから、観客には理解も共感もできないのです。

役者陣の演技は素晴らしかった!

ストーリーや設定がガバガバすぎる「バケモノの子」ですが、役者さんの演技は非常に素晴らしかったです。

特に熊徹を演じた役所広司ははまり役でした!
豪快に見えながらも、内面は繊細で不器用なバケモノを見事に表現していました。
テレビや映画に出ている俳優さんが声優をやると、俳優の顔が浮かんできて気になっちゃうことがあるんですけど、役所広司に関しては完全に熊徹と一体化してましたね。

百秋坊を演じたリリー・フランキー、多々良を演じた大泉洋も好演で、それぞれのキャラにばっちりハマってました。
リリー・フランキーなんかはいつも飄々とした役を演じることが多いので、今作では声を聞いただけでは誰だかわからなかったです。

それだけに、雑なストーリーがもったいなかった!
熊徹、多々良、百秋坊、そして九太の4人による冒険物語をもっとしっかり見てみたかったです。
2時間の映画じゃあまりに短かったんじゃないかな〜。